病気について

犬・猫・ヒトの必要な栄養素の違い

犬や猫に必要な栄養は、ヒトと同じように“タンパク質”、“脂肪”、“炭水化物”、“ビタミン”、“ミネラル”の5大栄養素と、新鮮で清潔なお水です。 (5大栄養素に加えて水を入れて、6大栄養素と説明される場合もあります。) 但し、動物種が違えば、それらの必要な割合は各々で異なります。 また、ライフステージ(幼犬・幼猫期、成犬・成猫期、老齢期、妊娠・授乳期など)によっても、必要な栄養バランスは異なります。

(参考)「飼い主のためのペットフード・ガイドライン ~犬・猫の健康を守るために~」環境省

昔は、犬にはヒトのお食事の残り物や、猫にはネコまんまを与えていた時代がありましたが、 今では犬・猫の平均寿命が延び、栄養管理をしっかりしてあげることで健康な老齢期を迎えられる手助けになることが多いので、 安易にヒトの食事を与えないように気をつける必要があります。 また、動物種の違いによって、中毒になる食材も異なります。 犬には犬用、猫には猫用に特別に考えられたペットフードを与えるか、きちんと管理された手作り食を与えてあげるのが良いでしょう。

食べ物 たまねぎ
チョコレート ブドウ・レーズン
理由 貧血や嘔吐などを起こす可能性があります。
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不整脈、心拍数の増加、痙攣(けいれん)などを起こす可能性があります。
チョコレート画像
腎不全を引き起こす可能性があります。
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食べ物 キシリトール 添加物(プロピレングリコール)(猫)
理由 消化管を傷つけたり、歯の破折(はせつ)や咬耗(こうもう)のリスクがあるなど、 アメリカではFDAから骨は犬にとって安全ではないという案内が出ています。
骨画像
キシリトールの摂取により、肝不全や低血糖の可能性があります。 体重1kgあたり0.1mg以上で低血糖に、0.5mg以上で肝不全が見られたという報告がありますが、個体差による影響が大きいと考えられています。
キシリトール画像
プロピレングリコールは、犬のおやつなどでよく使われる、保湿剤、甘味料として等の役割がある添加物です。 ペットフード安全法で猫ではプロピレングリコールを使ったフードの製造・販売は禁止されています。猫で貧血などを起こす可能性があります。 (*犬には安全で、法律でも使用は禁止されていません。)

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ペットフードと手作り食

動物(主に犬と猫)に与える食事には、大きく分けると「ペットフード」と「手作り食」があります。 それぞれに良い点があり、用途やご家族のライフスタイルにあわせて選ばれることをお勧めします。

食事 ペットフード 手作り食
良い点
  • 簡単に与えることができる。
  • “総合栄養食”であれば、水と一緒に与えるだけで犬や猫に必要な栄養を過不足なく満たして与えることができる。
  • 専門的な知識がなくても安心
  • 最近では多種なフードが有り、好みのものを選べるようになっている。
ペットフード画像
  • 愛情をこめてご家族で作ってあげられる(使う素材をご家族で選べる)
  • 食物アレルギーなどの疾患では、アレルゲンとしてわかっているものを確認して避けて与えられる。
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悪い点
  • メーカーも種類も多いので、何を基準に選んで良いか分からない。
  • 毎日の主食として与えるためには、手間がかかる
  • 専門的な知識が必要
  • サプリメントなどと併せて与えないと、栄養不足になる可能性がある。
  • 費用がかかりがち
  • 動物種の違いによって、与えてはいけない食材があり、避ける必要がある

上記は一例ですが、何を選んで良いかわからないとお困りの際は、当院のスタッフまでご相談ください。

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ペットフードの選び方

ペットフードには、目的別に分類すると「総合栄養食」「間食(おやつ)」「その他の目的食」があります。

分類 説明
総合栄養食 犬または猫に、そのフードとお水を与えるだけで、1日に必要な栄養素を摂取できるフードで、 ライフステージにあわせて選ぶ必要があります。
間食 おやつやスナックまたはご褒美として、限られた量を与えることを意図したペットフード。
その他の目的食 特定の栄養の調整又はカロリーの補給、あるいは嗜好性増進などの目的を満たすもの、 更にはペットフードまたは食材とともに与えられることを意図したもの。 動物病院で処方される特別療法食をはじめ、サプリメントなどの栄養補助食、おかず・副食タイプのものがここに分類されます。

※特別療法食は、特定の疾患や疾病などに栄養的に対応するために栄養バランスが考慮され、 獣医師による専門的なアドバイスや処方に従って与えることを意図したペットフードです。

ほとんどのペットフードのパッケージにはこの分類が記載されていますが、 お選びの際、この分類をしっかり確認されている方は少ないように思います。 毎日与える“主食”としてフードをお選びの場合は「総合栄養食」を選択してください (特別な病気をお持ちで療法食を処方されていない動物の場合)。 それ以外のフードでお腹を満たしてしまうと、肥満になったり、必要な栄養が不足して病気につながる恐れもあります。 必ず目的に合わせて与えてあげてください。

また、特別療法食を与えられている時は、ご家族でグッと我慢していただき、 安易に他のおやつなどを与えず、まずはスタッフにご相談ください。 ちょっとだけ・・・と思っても、療法食以外の栄養素が、治療の妨げになる場合があります。

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ペットフード(お食事)の与え方

【1日のお食事の回数】

犬:
犬の場合、1日分のお食事の量を2~3回に分けて与えるのが良いでしょう。 犬は一度に自分の体重の約1/5の量を食べることが出来るくらいの胃袋を持っています。 そのため、与えれば与えた分だけ口にする傾向があります。 1日1回で与えると、一気に沢山の量を食べてしまい、それが引き金で胃捻転などの病気を引き起こしたり、 空腹の時間が長いことで胃酸を吐いてしまう場合もあります。 数回に分けて与えてあげることが大切です。 また、主に消化器の病気をお持ちの犬では、1日に5回など、 さらに頻回に分けてお食事を与えることをお勧めしたり、逆にお食事を制限する場合もあります。

猫:
猫の場合、1日に2~3回に分けて与えるか、ドライフードを置き餌として好きなときに食べられるようにして与えるのが良いでしょう。 猫は、起源をたどると元々集団ではなく、個人で生活する生き物です。 自分のからだより小さい獲物(ネズミや魚など)を、空腹ごとに狩りをして食べていました。 ネズミ1匹のカロリーは、猫の1日に必要なカロリーの約1/10といわれており、 単純にネズミだけで計算すると、1日に10回は狩りをして食べていたことになります。 その習性から、少しずつ好きな時に食べる傾向が今も残っています。 置き餌をするときは、缶詰などでは季節を問わず腐敗する可能性があるため、 ドライフードなどの水分の少ないお食事を与えてください。 また、犬と同様、病気によってはお食事の回数を制限したり、増やしたりする場合もあります。

【お食事をなかなか食べてくれない時の対処法】
お食事を与えても、なかなか食べてくれない・・・うちの子は食が細い・・・などのご心配はよく当院でもお聞きします。 もちろん病気が原因であることもありますが、それ以外で一番多い原因は、おやつの与えすぎによる満腹感のせいで、 主食をなかなか口にしないパターンです。おやつは1日に必要なカロリーの20%以内におさまるように与えることが一般的に勧められています。

それ以外で、食べることを促進してあげたい時の工夫として、

  • フードを少し電子レンジで温める
  • フードをふやかして与える
  • フードを与えるボウルの土台の高さを調整する

などで改善することがあります。

特に猫では、体温に近いものを好む傾向があり、犬でも嗅覚を刺激するため、 温かくすることで同じフードでも食べてくれることがあります。 犬・猫の体温にあわせて38~40度くらいを目安にします。 フードをふやかすときは、ボウルに残った水分に水溶性のビタミンなど水に溶ける性質の栄養素が溶け出しているので、 ふやかしたフードと、その水分まですべて与えるようにしましょう。

また、フードを与える際のボウルの位置が低すぎたりすると、特に老齢期や整形疾患の犬・猫では関節に痛みがでて、 お食事が進まないことがあるため、フードボウルの高さを調整することで食べやすくなることもあります。

参考)一般社団法人ペットフード協会HP

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