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飲水量を増やす工夫(食事と水は同じ場所じゃない方が良い?)

当院は、キャットフレンドリークリニック(CFC)ということもあり猫の診察をさせていただく機会が多いです。

猫ちゃんの祖先は砂漠出身のリビアヤマネコと言われており、お水の少ない環境で生き延びるため体が適応し、水の少ない濃いおしっこを作り膀胱内に貯めることができるため、膀胱内のマグネシウムバランスが崩れたり、pH(酸度)に変化が起こり、尿石症などの膀胱炎を起こしやすいと考えられています。また、年齢が進むと慢性腎臓病に罹患する猫ちゃんが多く見られるため、猫ちゃんという動物は泌尿器系疾患が見られやすい特徴があります。

そのような病気の指導の際によくお願いすることとして飲水量を増やすことがあります。お水を飲む量を増やすだけで病気の治療になることもありとても大切なことですが、猫ちゃん自体があまり水を飲まない動物さんなので、飼い主様が具体的にどのようにしたらいいのか悩まれることが多いです。そこで幾つか実践できる工夫をお伝えしたいと思います。

※キャットフレンドリークリニック(CFC)とは、国際猫医学会(isfm)により「猫にやさしい病院」として認定を受けている病院のことです。この認定を得るためには、猫にやさしい施設、設備、病院における猫ちゃんのやさしい保定、検査などを行っているかどうか、また猫についての専門性の高い診療をおこなっているかなど、様々な項目をクリアする必要があります。

①食事を見直す

●ウェットフードにする、フードに水を混ぜる

単純に食事自体を水分量の多いものにする、水分を加えることで水分摂取量が増加します

・ウェトフード:水分含有量70〜80%

・ドライフード:水分含有量7〜10%

上記の通りウェットフードとドライフードで水分含有量は10倍近く変わります。

ドライフード自体に水を混ぜたり、ふやかしたりする方法でも食事として水分が摂取できるのでオススメです。ただ、猫ちゃんは食事の好みがあるため水分を混ぜると食べなくなることもあります。温めたりして臭いをたたせると食べる場合もあるので試してみてください(野生時代の獲物の体温に近い30〜40度ぐらいが一番嗜好性が高いとの報告があります)。

●食事回数を増やす

食事をすると、その後水分摂取をすることも多くなり、結果的に水分量が増えます。自由摂食するより、1日1回の食事の方が、水分摂取量が少なくなったというデータがあります。また1日4回の食事で一番飲水量が多くなったとの報告もあります。

 

②食器を見直す:

●好みがあるので好きな食器さがしましょう

     ・食器の種類

     ・食器の大きさ

食事用の食器もそうですが、猫ちゃんによって好みがあります。

食器の種類としては

     陶器>ガラス>プラスチック>ステンレス

が好ましいとされており、陶器が一番匂いなどの影響が少ないためと言われています。

食器の大きさは一般的にヒゲが当たりにくいように平たく大きいものが好ましいとされていますが、飲水に関しては小さくてヒゲで食器の端が認識できる方が好ましいとの報告もみられるため個体差があると思われます(猫の好み!)

●こまめに清潔に

水も入れっぱなしや継ぎ足しばかりでは汚れてしまいます。こまめに清潔にするようにこころがけていただきたいですが、洗剤であらってしまうと匂いが残る可能性があるため水洗いで十分です。特に猫ちゃんは柑橘類が苦手なことが多いため、日本でよくある柑橘類のニオイのする洗剤は避けてあげた方が無難です。

 

③置き場所を見直す

・食事の場所と離れた位置に

愛猫さんの飲水器はどこに置かれていますか?

いくつも水を設置した状況で、猫ちゃんがどこに置かれたお水を好んで飲むかを調べた結果、食事のある場所と別の部屋にある水を好んで飲んだとの報告があります。食事と飲水器を少なくとも50cm以上離した方がいいと言われており(トイレとも)、食事の場所と水の場所は分けた方が好ましいです。野生では腐った肉によって汚染されている可能性があるため、食事近辺の水を飲まないと言われています。

・たくさん設置する

 1箇所だけの設置ではその場所に近づかないとお水を飲みません。数多く水を飲める場所がある方が1箇所の時よりも飲水量が増加したとの報告があります。前述の通り、食事の場所以外にもいくつか(部屋がいくつかある場合にはそれぞれに)水が飲める場所があれば理想的です。

 

④水を見直す

・好みの水をさがす

 猫ちゃんごとに好みのお水があります。冷たい方がいい、ぬるめがいい、氷を入れるといいなど。好みのものでなくなってしまうとお水を飲まなくなることがあるので、こまめに変えてあげることも必要です。

・水に香りや味をつける

 出汁を混ぜたり、猫用ミルクを混ぜたりすることで飲水量が増えることがあります。ただ、お水が傷みやすい可能性があるため、こまめに少量ずつ与えるなどの工夫が必要です。

・水のあげ方を考える

流動性のある水(流れている水)を好む子も多いです。噴水型のものを利用されていることも多いと思いますが、データ的には器との飲水量の差はなかったとの報告があります。ただ、これも個体差はあって、噴水型にしたことで増加した子もいるので好みのあげかたを探してあげることも大切です。ずっとは水道代が問題になるので、一定時間に限って蛇口から少しずつ水が流れるようにすることも有効な場合があります。

 

上記をまとめると、飲水量を増やすためには、水の与え方や器は猫ちゃんの好みを探してもらう、水は食事やトイレの場所と話して複数箇所設置する、それでも変わりなければ食事自体で水分を摂取するように調整することが大切です。

飲水をしっかりすることで病気の予防や病気になった際の治療になることもあるので、しっかりと適切な飲水ができるように環境を整えてあげてください。